一寸の虫にも五分の魂

それは15年ほど前のある日の出来事です。

山の中にある我が家の横の空き地で草刈りをしていた時のことでした。

玄関のドアを開けたままにして草刈りをしていることに気付き、急いで家の中に虫たちが舞い込んでいないかを確認しようと部屋に入って窓に目をやると、とてつもなく大きなトンボが羽音を立てて窓にツンツンと当たっているのが見えたのです。

「あー、しまった! 気付くのが遅かった!」。外に出られないで困っているオニヤンマをそっと捕まえて外に逃がしてあげることが出来、命を一つ助けることが出来たと思うと同時に、ドアを開け放しにしておくのは禁物だと後悔しきりでした。

それは大きなオニヤンマで羽根を拡げた大きさはおそらく20㎝以上はあったと思われ、目玉もとっても大きく、まるで小型のヘリコプターのようでした。

オニヤンマを外に逃がしてしばらく草刈りを続けていたその時、前方に何か気配を感じたのでその方に目をやると、オニヤンマがまたこちらに向かって飛んでくるのです。

「きょうはオニヤンマの多い日だなぁ~」と思っていると、どんどん私の方に向かって飛んで来るではありませんか!

立っている私の頭の回りを3周し、脚で大事そうに抱えているものを私の目の前でホバリングしながら、「ほら、ご馳走を持ってきましたよ!」と言わんばかりに見せるのでした。

どう見ても脚で抱えているものはカミキリムシです。

私に見せたあと「どうぞ!」と抱えているカミキリムシをパッと地面に落とし、飛び去って行ったのです。

あとで調べてみたら、カミキリムシはオニヤンマの好物なのだそうです。

「一寸の虫にも五分の魂。オニヤンマの恩返し」という信じられないような本当の出来事でした。